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リンドウ「…これじゃ四つか」ソーマ「…了解」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:46:43.72 ID:Kg3MON0A0

新人区画 リンドウの部屋

雨宮リンドウは引き出しの中から煙草を取り出し火をつける
それは前隊長がリンドウの部屋に残していったものだった

ウロヴォロス討伐作戦から3日後

リンドウは煙草をふかした

「……まず」

――――まだ慣れてはいない 仲間の死も 煙草の味も
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:47:46.70 ID:Kg3MON0A0

エントランス

「まだあいつは出てこないのか?」

百田ゲンは部下の雨宮ツバキに尋ねる

「…えぇ」

「そうか…まぁ、しかたないか」

静かに息を吐く

「…割り切れないのはこっちも同じだが、リンドウは経験不足だからな」



4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:48:28.01 ID:Kg3MON0A0

「回収班からの話では、ウロヴォロスの残骸からは隊長の神機は回収されなかったらしいですが…」

その問いにゲンは首を振る

「…あの状況だ。生きている可能性はほぼ無い」

ツバキは肩を落とした。ゲンは続ける

「仲間の死は、日常茶飯事だ…おまえらは、運が良すぎただけだ」

「そう、ですね」



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:49:02.40 ID:Kg3MON0A0

支部長室
革張りのソファーにもたれた科学者ペイラー・榊はぽつりとつぶやく

「…惜しい人を亡くした」

フェンリル極東支部長ヨハネス・フォン・シックザールは淡々と返す

「GEが死ぬのは仕方ないことだよペイラー」

「わかってはいるよ」

「それに、我々に死を悲しんでいる時間などない」

ヨハネスの言葉には力がこもっていた。



7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:49:39.43 ID:Kg3MON0A0

「ところで、神機の開発はどうだ」

「…超弩級アラガミから手に入れた素材が役に立っている。1週間もしたら完成するよ」
サカキは少し調子を取り戻したのか声が大きくなっていた

「居住区の装甲強化やバレット弾の強化も検討している」

「わかった。頼むぞ」

ヨハネスは続ける

「彼の死を無駄にしないためにもな」

そういうとサカキはまた肩を落とすのだった



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:50:16.30 ID:Kg3MON0A0

三日後 リンドウの部屋

「いるか?」

問答無用でツバキは部屋に入り込んできた
報告があるらしい
聞きたくないことだが聞くしかない

「第一部隊隊長の腕輪が地下で発見された」

「…そうか」

無感情に言い放つ。涙はもう流れなかった

「驚かないんだな」
「…」
「…煙草もほどほどにな、明後日には復帰しろ」

そういって出て行ってしまった



9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:51:02.17 ID:Kg3MON0A0

エントランス

ツバキはヒールをカツカツと鳴らしながら考えていた
それはウロヴォロスとの戦闘時に感じた限界

従来の戦闘法だけではどうすることもできなかった
どんな荒神にも対応できる対荒神戦闘の確立

(これからあのような敵が増えたら)

そう思うと、怖くなる



12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:51:33.42 ID:Kg3MON0A0

入隊当時と比べて敵は強くなった
小型荒神の種類も発生頻度も多くなった

「…生き残った者の勤めを果たさなければ」

小さくつぶやく

それは彼の死から学んだこと。なによりも生きることを優先した隊長から学んだこと
自然にヒールの音が高くなる
その後ろ姿を呼びとめるものがいた

「ツバキさん?」



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:52:10.63 ID:Kg3MON0A0

リンドウの部屋

(「まだまだ背中は預けられねーな」)
頭の中で隊長との思い出が巡る

(「うーん20までは数えてたんだがなぁ…」)
コンゴウの残骸の上で煙草をふかしながら頭をかく彼と今の自分を重ねていた

「…やっぱり不味いな」

煙を吐きながらつぶやくと同時に勝手にドアが開く
「うわ、煙草くさい」
そこには、久しぶりに見た顔があった



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:52:48.77 ID:Kg3MON0A0

「リンドウ?どうしたの?久しぶりの幼馴染の顔なのに忘れちゃった?」
笑いながら近づいて彼女は隣に座る。忘れるはずがない。

「サクヤか…久しぶりだな」
彼女の名は橘サクヤ。
子供のころからの幼馴染であったが、ここ半年はあっていなかった

「…どうかしたのか」
久しぶりに会う彼女は変わっていなかった
ある一部を除いて
「…おまえ」



17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:53:20.46 ID:Kg3MON0A0

少し前 エントランス

ツバキが振り向いた先には見知った顔があった
「サクヤか…オペレーターは今日は非番か?」

サクヤは笑顔でうなづく
「ええ、色々あって」

そう言うと後ろに組んでいた腕を出してこう言った
「メディカルチェックがやっと終わったんです」
ツバキの顔が強張る



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:53:57.14 ID:Kg3MON0A0

リンドウの部屋

リンドウはサクヤの腕にある腕輪を凝視しながら
「…それ」
その言葉の先は言えなかった
サクヤは意を酌み取りながら

「そう、これで私もGE…お仲間ね」

言葉が出ない
サクヤは続ける
「まだ訓練生だけどね」
腕輪をさすりながらリンドウに近づく



20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:54:39.30 ID:Kg3MON0A0

頭の中がまた割れそうに痛くなった
まさか幼馴染がGEになんて考えたくなかった

彼女が極東支部のオペレーターであるのは入隊当時から知っていたが
共に戦う仲間になるなどと思ってもいなかった

眉間にしわを寄せながら
「おまえ…GEになるってのがどういうことかわかるってるのか!?」

感情的に強くいってしまった



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:55:12.88 ID:Kg3MON0A0

「あなたに言ったら…反対するでしょう?」
柔かく微笑みながら彼女は続ける
「正式な発表はまだだけど…今後はオペレーター兼訓練生として任務に就くわ」

なんてことをしてくれたんだ。俺の大切な仲間がまた死地に出向くことになるなんて
「あなたの力になりたいの」
彼女の声は優しく紡がれた

リンドウの心にはタールのように黒い何かが広がっていた

「それと…支部長が呼んでいるわ」



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:56:09.45 ID:Kg3MON0A0

支部長室
だるい身体を起こしサクヤとともに支部長室へ入る

ヨハネスは顔をモニターに向けたまま
「サクヤくん、ごくろうだった。少し待ってくれないか」

リンドウは何も言わないまま革張りのソファーに腰をおろし
「…どういうことですか」
静かに言い放つ

キーを打つ音が響く
たまらず声を荒げた
「どういうことだって聞いてるんです!」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:57:02.72 ID:Kg3MON0A0

顔色を変えず、ひと段落したヨハネスは立ち上がり
「リンドウ君、君を第一部隊のリーダーに任命する」

「はぁ?」
思わず声が出た ヨハネスは続ける
「サクヤくんも第一部隊所属の隊員だ。ペイラーの訓練が終わり次第…」
「あんたは!!」

叫ぶ声を諭すように遮られる
「君が悲しんでいるのも分かる。だが私たちも立ち止ってばかりはいられない」

正論だ



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:57:43.68 ID:Kg3MON0A0

「サクヤくんはもう出たまえ。もう少しで講義の時間だろう?」

「はっ」
敬礼後サクヤは部屋を出る。出る直前小声で

ごめんなさい リンドウ

と、聞こえた気がした
ヨハネスは顔をまっすぐ向けたままリンドウをみる

「整理が追いつかないのも分かるが…さっき言ったとおりだ」

「なんであいつも…サクヤもGEにしたんですか」



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:58:20.90 ID:Kg3MON0A0

「適性があったからだ」
淡々と返される

「だからって…」
「君も知っての通りGEは少ない。だがペイラーのおかげで適性のあるものが飛躍的に多くなった」
ヨハネスは歩きながら続ける
「新しい腕輪は従来より適合者が多い、君たちと色こそ同じだが性能・量産性・人体への影響も改良された」
リンドウの目の前に立ち

「いつまでもめそめそと過去を引きずるな」

殴りかかりそうになった時、奥の扉が開いた



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 20:59:19.84 ID:Kg3MON0A0

白髪の少年が出てきた

「…」
何も言わずこっちを見据える

「紹介しよう、彼はソーマ。新型神機バスターブレードの適性者だ」
ヨハネスは続ける
「君には彼の教育係をしてもらう」

どこかで聞いたような言葉だった



32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:00:13.63 ID:Kg3MON0A0

「…」
白髪に褐色の肌が映える

リンドウはヨハネスをにらみながら
「こんなガキまでGEに…あんたは何がしたいんだ」
吐き捨てるように問い詰める

「…俺はもうガキじゃない」

答えたのは少年の声だった



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:00:48.21 ID:Kg3MON0A0

「…そうかい」

二人の制止しながらヨハネスが言う
「さっきも言ったとおり、腕輪の改良により、これからは適合者が飛躍的に増えるだろう」

リンドウの肩に手を置き

「GEに死はつきものだ…死なないよう教育するのも君の仕事だ」

手に力が入る

「これからのものが死なないために…我々のできることをしろ」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:01:32.96 ID:Kg3MON0A0

エレベーター
その後は隊長の権限の強化など事務的な報告だけだった
支部長室を後にしたリンドウはソーマをつれて訓練場に向かっていた
この怒りをどうにかしたいがために

「…神機をもって訓練場に集合しろ」
「…」

少年は何も言わない

「わかったな」
イライラが言葉の節々に出る
「…」
何も言わない少年はだまって頷いただけだった



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:02:28.34 ID:Kg3MON0A0

支部長室

二人が出た後
まだヨハネスは仕事に戻らなかった

壁に掛けられている絵を見ながら

「他者を犠牲にして自らが生き残ることは罪に問われるか?」

ぽつりと小さく呟いた



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:03:12.95 ID:Kg3MON0A0

訓練場

少年が持ってきたのは身の丈の二倍はある刀身の神機
リンドウは大きいと思ったがそれ以上の感想は出なかった

「腕輪と接続を確認しろ」
「…」

「ガキだからと言って手を抜くつもりはねぇ」

言った瞬間目の前に黒い刀身が突き付けられた

「俺は…もうガキじゃねぇ…」



38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:03:54.62 ID:Kg3MON0A0

力任せにそれをはじく

黒い鋸が大きく振りかぶる
紅い鋸が横一線に薙がれる

紅い鋸と黒い鋸が当たっては離れ当たっては離れ

リンドウとソーマは互いに感情を顔に出さず
訓練場には神機がぶつかる音だけが響いていた

それを見下ろす二人の姿があった



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:04:47.62 ID:Kg3MON0A0

「すごいな…今度の新入りは」
ゲンが呟く
「ええ、リンドウについていけるほどの身体能力をもったGE」
ツバキがそれに答える
「相当な逸材のようですね」

ゲンはツバキにも聞こえないほどの声で
「…それにしてもあんな子供まで…本当に世も末だな」

白髪の少年がこちらを見たような気がした



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:05:33.16 ID:Kg3MON0A0

どのくらい時間がたったかわからない
二人の闘いは突然終わった

ソーマが倒れるという形で

「…終わりか」

戦闘状態を解くと自己嫌悪した
まさか子供にあたるなんて

ソーマを担ぐと、あまりの軽さに自己嫌悪が増す
リンドウは訓練場を後にした



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:06:19.33 ID:Kg3MON0A0

一部始終を見ていたツバキとゲンは固まっていた

約3時間の殺し合いが目の前で行われたからだ
息もつかせぬ攻撃
すんでのところでかわし攻撃

「化け物か?あいつらは」

「え、えぇ…いや」

人間とは思えない
そうツバキは口を手で隠しながらそう言った



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:12:58.07 ID:Kg3MON0A0

ベテラン区画

ソーマを医務室に置いてきた後
新人区画まで戻ったが 部屋が変わったのを思い出した

上手くいかない自分に嫌気がさす
扉を開けるとディスプレイに真っ赤な夕日が海に沈む風景が映し出されていた

自分の教育係 第一部隊前隊長の個室だった
自分が以前来た時とほぼ変わっていなかった



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:19:37.66 ID:Kg3MON0A0

(隊長は綺麗好きだったからな…)
冷蔵庫をあけると配給ビールがそのまま置いてあった
何の気なしにとって開け飲んだ

冷たい感触と発泡が喉をうるおす
煙草に火をつけ煙を吐く

「…不味い…なんで隊長はこんなの好きだったんだ」
壁に掛けられた隊長服を見て問う
「教えてくれないか…」

狼は答えない



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:26:14.76 ID:Kg3MON0A0

一週間後 支部長室

ツバキはヨハネスに喰ってかかっていた

「まだ入りたての新人を任務に出すなんて何を考えているんです!!」
「ソーマのことか?」
落ち着いた調子で返される
ヨハネスは続ける
「君たちの報告からソーマにはそれ相応の力があった。今は一人でもGEが欲しいのでな」
「ですが…あんな子供を」

「ソーマの学習能力は常人の比ではない。あとは現場の空気に慣れるだけだ」



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:27:48.46 ID:Kg3MON0A0

贖罪の街
ヘリの中は機械音と二人の神機使いがいた
この一週間 互いに戦いあった二人

ヨハネス支部長の命令がなければソーマを連れて出撃などしていなかった
白髪の少年は青いパーカーに身を包み耳にはイヤホンを付けている
緊張してリラックスを図っているのだろうか

到着ポイントについたとパイロットが告げる

作戦の開始時間が刻々と迫る



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:33:57.97 ID:Kg3MON0A0

地上に足がついて作戦を確認する
オウガテイルの掃討が今回の任務だ

リンドウはソーマにいう
「命令は3つ」
「…」
「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで俺の後ろに隠れろ。そしたら守ってやる」
以前自分が言われた言葉だ

「あんたに守られるほど俺は弱くない」
「…そうかい…12:00作戦を開始する」



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:38:46.63 ID:Kg3MON0A0

ツーマンセルで行動
オウガテイルを発見し臨戦態勢をとる

さきに飛び出したのはリンドウだった
尻尾をかわし、棘をかわし、切りつける

流れるように倒す
ソーマも初めてのような動きとは思えない立ち回りでオウガテイルの後ろをとる

作戦は驚くほど順調だった
初陣は成功 後にはオウガテイルの残骸が残った



54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:40:02.58 ID:Kg3MON0A0

「作戦完了…これより帰投する」
ヘリに無線をいれた後
「…お前もよくやった」

ソーマにねぎらいの言葉をかける
少し驚いた顔をしたソーマに言う
「どうかしたか?」
「いや…」
顔をそむけた少年は続ける
「…あんた、褒めることもできるんだな」

二人の距離がほんの少し近づいた瞬間だった



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:41:06.53 ID:Kg3MON0A0

それから一ヶ月
第一討伐部隊は怒涛の快進撃をする

コンゴウ、シユウ、グボロ・グボロ、サリエル、ヴァジュラ
現在確認できる荒神をことごとく打ち破り

討伐部隊には化け物がいると噂されるほどになった

そして、そんな二人を心配そうにみるツバキの姿があった

まるで、死に急いでいるような感覚を肌で感じていた

そんな愚弟をさらに死に急がせる報告が耳に入る



56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:41:50.07 ID:Kg3MON0A0

エントランス
「GEを狙う荒神だと?」

「あぁ、地下街に行ったやつらがことごとくやられてるんだとよ」

「おいおい、勘弁してくれよ。ただでさえ荒神が強くなってきているってのに…」

「溶岩も出てるんでしょ?私行きたくないよ」

「お前まだ訓練生だろ」

「回収班もやられてるから神機の回収もできないらしいぜ?」

「ま、大丈夫さ。第一部隊にまわされるよ。あいつら化け物だから」



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:46:27.25 ID:Kg3MON0A0

噂は尾ひれがつく
たまらずツバキは声を荒げた
「勝手な憶測で物を語るな!!そんなことを喋っているひまがあったら訓練をしろ!」

訓練生たちは一瞬固まった後、そそくさとエレベーターに向かう

同時に任務を終えた第一部隊が戻ってくる

「今回も任務ごくろう」
「おう」

だいぶ落ち着きを取り戻した愚弟に声をかける
その後ろには彼の部下がいた



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 21:54:54.66 ID:Kg3MON0A0

「ソーマも調子はどうだ?」

「…」
こちらは相変わらずだった

「危なっかしい戦いばかりしやがるから、大変だよ」
リンドウが少しソーマをにらむ
「まるで自分から死に向かうようなやつだ」
「…俺は死なない」
「言ってろ、糞ガキ」

一瞬、前隊長の姿を見たような気がした



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:00:32.32 ID:Kg3MON0A0

そんなやり取りをしている最中
アナグラ内の放送が三人を呼ぶ

『第一部隊および雨宮ツバキ少尉、17:00までに支部長室に来てください。繰り返します…』

アナグラ内がざわつく

第一部隊が呼び出される事は多かったがツバキまで呼ばれる事は無かったからだ

噂と期待の目が浴びせられる

ツバキは苦虫を噛み潰したような顔で行くぞと言った



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:09:47.75 ID:Kg3MON0A0

支部長室

ヨハネスは落ち着いた声で話す
「スサノオの討伐を頼みたい」

聞いたことのない荒神だった
ヨハネスは続ける
「煉獄の地下街に蔓延るGEを標的とする荒神だ」

「いずれ脅威となる存在だ。ここで手を打ちたい。やってくれるな」

「君たちほど腕の立つものなら。喰えるだろう」



64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:14:28.68 ID:Kg3MON0A0

ツバキが反論しようとした時、口を開いたのはリンドウだった
「ソーマもですか」

ヨハネスは顔色を変えずに
「そうだ」
このところの活躍から当然と言った様子だった

「…了解」

愚弟が何を考えているんだと口に仕掛けたが押し黙る

「作戦は明後日だ。下がってよし」



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:15:24.37 ID:Kg3MON0A0

リンドウの部屋

「お前は何を考えているんだ!!」
ツバキの怒号が飛ぶ
「…しかたないだろ、支部長の命令なんだ」
「だからと言って…あんな子供にやらせる任務じゃないだろ!」
「俺が守る」

リンドウは静かに言い放つ
「リンドウ…」
覚悟を決めたのかツバキは
「…わかった、しかし作戦は私が練る」

そう言って姉は部屋を後にした



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:25:13.09 ID:Kg3MON0A0

(「「だらしねーなぁ」」)
隊長の言葉が響く

(「命令、俺の後ろに隠れとけ」)

煙を吐きながら呟く

「あんたみたいに…俺は強くなったんだろうか…」

自問自答があの日から止められずにいた

言葉がぐるぐるとまわり、リンドウは煙草を消した



75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:38:19.58 ID:Kg3MON0A0

出撃日

エントランスでリンドウたちはゲンから死ぬなよと言われ送り出される

いわば生還率の低いミッションを回されたわけだ
ツバキが強い言葉で
「これより、ブリーフィングを行う」

スリーマンセル
近距離と遠距離の協力型の戦闘法の確認をした後

三人はヘリポートへ向かった

ゲンは三人を見送りながら静かに
「糞ガキ…見ているんなら、あいつらを守ってくれ」

誰にいうわけでもなく言葉を紡いだ



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:51:19.05 ID:Kg3MON0A0

煉獄の地下街

溶岩が湧き出る地下鉄後

リンドウはソーマに対していつもの言葉をかける
「命令は3つ」
「…」
「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで俺の後ろに隠れろ。そしたら守ってやる」

そのやり取りが終わった後ツバキが続ける
「この作戦で成果が出れば、この戦闘法は確立できる。行くぞ」

「これより、作戦を開始する」



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:57:30.97 ID:Kg3MON0A0

潜む影が一つ
紫色に光る体を震わせる

餌が来た

新しい餌が来た

両腕からよだれを垂れ流しながら

影はそれを待つ



78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 22:58:02.40 ID:Kg3MON0A0

「静かだ…」
ツバキは先行する二人を追いながらあの日を思い出す
隊長服に身を包んだ弟とその部下

ウロヴォロスと対峙した時のあの静けさを思い出す

風の音と雷のみが響く平原を

「気を引き締めろ、敵がどこからくるかわからん、隊列を崩すな」

二人から返事は帰ってこない

こちらから発見できることを心から願っていた



79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:04:14.79 ID:Kg3MON0A0

姉からの命令を耳にしながらリンドウは落ち着いていた

この一ヶ月、ソーマと共に戦い
隊長の気持ちがだんだんと理解できてきたように思っていた

(こいつは死なせない)

そう心に決めながら周囲に気を配る


柱の向こうに光るものを見つけた

「目標を発見した!仕掛ける!!」

その掛け声が討伐開始の合図となった



80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:09:15.33 ID:Kg3MON0A0

ソーマは作戦を頭で確認しながら荒神を目視する

両腕が尻尾が神機のようなサソリのようなアラガミ
(近距離がオラクルを回収しながら、遠距離に渡す…)

ツバキとのブリーフィングを再確認する
(…)

リンドウとの距離を確認しながら走るが
突然、リンドウが立ち止った

「…どうした」

リンドウの顔に戸惑いが生まれていた



82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:18:25.37 ID:Kg3MON0A0

近くで見ると神機の捕食モードのような形の腕
鎧に身を包んだ本体

そんなものよりもリンドウの目を奪ったのはその尻尾だった

先端に粉々になった神機がついている
間は血管のような紫色が這う

それさえなければ自分もよく知っている形だったから

自分を鍛えてくれたあの神機
見間違えるはずがなかった



83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:25:45.14 ID:Kg3MON0A0

心臓が高鳴るのがわかる
かつての師を殺したのはこいつだ

だからウロヴォロスの残骸があっても
隊長の遺体がなかった

神機を握る手に力が入る
今までくすぶっていたどす黒い感情が一気に噴き出した

「こいつは俺がやる!!!」

久しぶりの命令違反だった



84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:30:02.18 ID:Kg3MON0A0

二人を置いてリンドウは翔ける

ツバキの制止する言葉も
立ち止るソーマも置いて
目の前の敵に集中する

敵は意外な行動に出る
一声啼いた後 逃げ出した

「逃がすかよ!!」
ここで見失うわけにはいかない

怒りが体を支配していた



85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:31:06.74 ID:Kg3MON0A0

スサノオという荒神は学習していた

今まで多くのGEを食し

標的は自分を追ってくると

両腕の口がガチガチと嗤う

追って来い

追って来い

嬉しそうに尾を揺らすのであった



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:34:58.51 ID:Kg3MON0A0

「…くそ、見失ったか!?」

目標を追い狭い通路に入ったリンドウは辺りを見渡す

そこには粉々になった神機が散らばっていた

「…ここが巣ってわけか…お前らにも帰る家ってのがあるんだな」
皮肉を言った。後ろの化け物に聞こえるように

入り口を塞ぐように紫色が光る
だらんとぶら下がった体は高笑いなのかガチガチと両腕を鳴らした

「喰ってやるよサソリ野郎」



88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:35:34.54 ID:Kg3MON0A0

大振りな噛みつきをかわし
一閃
片方の腕がまた噛みついてくる
ステップでかわす

神機が唸る
気持ちが高ぶる

そうしているうちに足を切り落とす

化け物が高く啼いた



90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:36:34.15 ID:Kg3MON0A0

「まずは足ひとつ!」

これで機動力はおちる
単調な噛みつきのみしかしない

力は強いがそれだけだ
すぐ決着はつく

リンドウの頭にはそれしかなかった
自分でも勝てる相手
隊長の仇打ち

それだけでなんの疑問も浮かんでは来なかった



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:37:47.55 ID:Kg3MON0A0

自分が一ヶ月前に太刀打ちできなかったウロヴォロス
それを倒した前隊長

その前隊長を倒した化け物がその程度の攻撃しかやってこないはずがない

不意打ちは突然に

化け物の尻尾からレーザーが出る
一瞬の硬直
それさえあれば十分だった

無慈悲な尾がリンドウを薙いだ



93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:38:21.25 ID:Kg3MON0A0

体が飛ばされる

背中に衝撃がくる

ガチガチとなる音が聞こえる

視界が真っ黒に染まった



94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:39:01.42 ID:Kg3MON0A0

俺はもうガキじゃねぇ!!

さすがに新型はでけぇなー俺のより二周りもでかい

俺は…もうガキじゃねぇ…

死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで俺の後ろに隠れろ!そしたら守ってやる

隠れろって…

あんたに守られるほど俺は弱くない

お前はまだまだ弱い、背中が預けられるまでにはまだまだだからな



96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:40:17.21 ID:Kg3MON0A0

そうか…ソーマを見たときはこれだったのか
頭の中を駆け巡る自分の、ソーマの、隊長の言葉

昔の自分がそこにいた

あいつは昔の俺だったんだな

ぼんやりと考える頭にはあの夕陽がしずむディスプレイが見えた
それを見ながら隊長と飲みあったときの言葉

…強くしてやるからな、リンドウ

優しい声だった



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:40:58.82 ID:Kg3MON0A0

…おい!目を覚ませ!

誰だ?

死ぬなって言ったやつが死んでどうする!?

そりゃ笑えるな

あんたは強いんだ…!起きろ!隊長!!

ソーマ?

「隊長!!」



98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:41:44.25 ID:Kg3MON0A0

「…なに泣きそうな顔してんだ」
「…!!」

リンクエイドされたんだとわかる
だるさは不思議となかった

「…状況は?」
「…ツバキ少尉が敵を引きつけてる」
「了解だ…」

体を起こし痛む体に鞭打つ
「今まで悪かったなソーマ」



99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:42:14.69 ID:Kg3MON0A0

「え?」
こいつは自分と同じだ
認められたくて認められたくて焦る
隊長の気持ちと自分の気持ちがあわさる

「新たな命令だ」
「…」
「命令は3つ」

「死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ、運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ」
そこで気付く
「…これじゃ四つか」
「…了解」

神機を肩にかけ声をかける
「いくぞ!!」



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:43:09.07 ID:Kg3MON0A0

遠距離からの攻撃
ツバキはよけながら最後のOアンプルを使用する

愚弟が先走ったおかげで隊列が乱れた
運よく引きつけたはいいが一人では厳しい

スサノオの尾が自分を捉える

「リンドウ…まだか…!!」

その言葉は虚空に消えると思ったが

「遅れた!!すまない!」
目の前にいつかの狼をかたどった背中が飛び出した



101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:43:58.00 ID:Kg3MON0A0

「ツバキ!指揮をしてくれ!!」
リンドウが叫ぶ
「遅いぞ、リンドウ!!」

「説教はあとだ!今はこいつをやる!!」
自分の勝手でこの状況を作り出したというのに…この愚弟は…

そう思いながら笑みがこぼれた

「こいつの攻撃はは両顎の噛みつき!尾から波動!そして横薙ぎだ!!」

「ソーマとリンドウ!私の指揮で動け!」

「了解!!」



102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:44:46.32 ID:Kg3MON0A0

「リンドウ!右に行け!ソーマは左!」
ツバキの指示が飛ぶ

「両足の切断を最優先!機動力を奪え!合図で防御をしろ!」

ふたつの鋸は命令通りにうごく

化け物が啼く

「オラクルがたまったらこっちに回せ!」

スサノオの尾に力が入る

「防御!!」



103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:45:29.17 ID:Kg3MON0A0

甲高い音が地下に響く
いままではこれで大抵の敵はいなくなる

スサノオの動きがとまる
その瞬間をツバキは見逃さない

「ソーマ!!今だ!叩きこめ!!」

「うおぉぉぉぉぉおお!!」
黒い鋸が両腕を壊す

ならばと尻尾で狙うが



104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:46:16.98 ID:Kg3MON0A0

「そう来ると思っていた!」

正面からツバキの銃が先端を捉える
先端に度重なる衝撃を受け剣が崩れ落ちた

一度引く
こいつらには勝てない

振り向いた先には


「よう…また逃げるのか?」


赤く唸る鋸が目の前に広がった



105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:47:43.67 ID:Kg3MON0A0

支部長室

ヨハネスは報告を受け言う
「…ごくろうだった。感謝する」

ツバキからスサノオの討伐と砕かれた神機の詳細と

前隊長の仇だったこと

「苦しい相手でした…」
「しかし、君たちは討伐できただろう?」
「はっ、それについても提案が」
「なんだ?」
「今後の戦術なのですが…」



106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:48:20.25 ID:Kg3MON0A0

エントランス

リンドウはゲンに隊長のことを伝える
彼はそうかと言った後
「ありがとよ」

消え入るような声で呟いた

リンドウは何も言わずにエレベーターに向かった



107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/06/06(木) 23:50:05.51 ID:Kg3MON0A0

リンドウの部屋

ビールを開ける

一口飲んだ後、煙草に火をつける

ディスプレイの夕日が柔かな光を放つ

煙を吐きながら

「…美味い」

ソファーに座りながら初めての感情を紡いだのだった


---------to be continued?


http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1370519203/

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